ライティング初心者向けで読みやすい「人を操る禁断の文章術」と、対称的な「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

「ブログ初心者向け書籍おすすめ」のブログ記事に掲載されていた、メンタリストDaiGoさんの「人を操る禁断の文章術」かんき出版と、古賀史健さんの「20歳の自分に受けさせたい文章講義」星海社新書 を読んでみました。

この2冊、あまりにも対称的な読了感だったので投稿します。


後悔せずにブログ運営でおすすめな本10冊選ぶ!プロブロガーが紹介

メンタリストDaiGoさんの「人を操る禁断の文章術」

短時間で読めてWebライティングの要点がつかめる「ブログ初心者向け」の本です。プレゼンやビジネスメールを主眼として書かれているので、それらの入門書としても最適です。


文章の目的は「人に行動させること」

冒頭で明確にしているのが「文章の目的は「伝わる文章」「伝える文章」ではなく、人が「~したくなる文章」である」こと。
言われば当たり前のことですが、結構いい歳になった社会人でも「伝わらない文章」から「伝わる文章」へ変えることがゴールだと思っている人が多いですよね?


 人を動かせる文章の共通原則

 次に、人を動かせる文章の共通原則/心構えとして、
  • 1文章=1結果を目標に
  • 人を動かすのは論理でなく感情
  • 書くべき内容は自分の中ではなく相手の中にある。書く前に相手をリサーチ!

を挙げ、読み進んでもらうために、以下の「人を動かすトリガー」を文章に織り込むよう勧めています。
  • 興味(異性、健康など年代ごとに共通性がある)
  • 相手の建前と本音のギャップを埋めてあげる提案
  • メリットだけでなくデメリットも明確に提示
  • 多くの人が買っている、認めている
  • 相手の承認欲求をくすぐる
  • 特別感、希少性

文章構築のテクニック

文章構築のテクニックは、以下の具体例をあげて「いい例悪い例」の文例付きで解説。
  • 書き出しはポジティブに「こんなの初めてです」「感激しました」
  • 表現を変えて10回織り混ぜ、畳みかける。ただし同じ表現×3回使ったら読んで飽きられる。
  • 話しかけるように書く
  • ポジティブ表現の間に1回、ネガティブ表現で緩急をつける
  • もっとも記憶に残る「追伸」でやってもらいたことを伝える
Amazonのレビューでは「新しいことは無い」「寄せ集め」「所詮芸能人の本」といった意見もあります。
しかしこれらの反応は、題名が過大表現なのと、DaiGoさんを「怪しい」と思うところが大きいように思えます。(私もそうでした)

もちろんこの本に書いてあることだけでライティングが会得できるわけではないし、帯のコピーにあるように「一行で人が踊る」わけでもありませんが、入門書として見ると、他の本では「マズローの欲求5段階説」や「快楽」の一言で説明を済ませることが多い「人間の関心」を、一歩踏み込んで平易に、丁寧に説明してあり、「人を動かすトリガー」「文章構築」も、他のWebライティングやセールスライティングの入門書の内容はほぼ網羅しています。

レイアウトも大きめのフォント、見出し/小見出しはさらに大きなフォントサイズで見やすく構成されており、非常に短時間で読了できます。

ライティングの「まず一冊」として、読むのが苦手の人にもおすすめできる本です。


古賀史健さんの「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

Amazonやネット書評での評価が非常に高い「20歳の自分に受けさせたい文章講義」、あとがきによると、元々はウェブマガジンへ著者へのインタビュー集として掲載される予定だった企画が出版された、著者の初単独著作だそうです。2011年初版。

文章はリズムで決まる

ます第一講(章)で、「文章のリズムとは何か」と解き明かしていきます。

  • 文章のリズムとは論理展開が正しいか破綻しているか。
  • 論理の破綻は、文を接続詞でつないでみるとチェックできる。

なるほど。今までは感覚でチェックしていましたが、具体的な方法論になっていてわかりやすいです。

続いて

  • 視覚的リズム
    ・句読点の打ち方
    ・改行のタイミング
    ・漢字とひらがなのバランス

  • 聴覚的リズム
    ・読点「、」の位置
    ・言葉の重複チェック

という、他のライティング入門書でも頻出のポイントが網羅されていきます。


しかし問題は第二稿以降。

文章の構成「導入(序論)→本編(本論)→結末(結論)」のまず「導入」のポイント解説から始まるのですが、その後はノウハウのポイントが以下の調子で説明されていくので、文脈を把握するのに非常に苦労します。


文章が説明しているノウハウと矛盾

それに加えて、第二稿から「文章のリズム」があやしくなってきます。

「文章にリズムを持たせるのは『断定』」と解説にあるのに、「ぼくは~だと思っている」「~だろう」という言い回しが頻出し、どうしてもリズムに乗ることが出来ません。

「はっきりと言っておこう」「ひとつ言明しておきたい」「少し長くなったのでまとめておこう」というような定型句が非常に多いのも読みづらいポイント。

「書いたものが集中して読んでもらえると思っているなら大きな間違い」「不必要な長文は避けよう」と書かれているそのままを具現化した様な文章の連続に、読むのが苦痛になってきます。

Amazonの星1つのレビューを見ると、同じ感想を持ってらっしゃる方が他にもいるので安心しました。他の方のレビューにここまで共感を覚えて嬉しかったのは、初めての経験です。


輪をかけて読み辛いのが紙面のレイアウト

  • 小見出しのフォントサイズが本文より小さい。こんな新書、初めて見ました。小見出しが本文より一段字下げしてあるのも意味不明。
  • 本文中で強調表示にしているのが「ポイントのみ」ではなく1センテンス丸ごと。なんで「ぼくは〜」「〜だと思っている」まで注目しなきゃいけないの?
  • 各章の巻末に章のポイントがまとめてあるが、それなら本文中の著者の「まとめ」は不要なのでは?

    「人を操る禁断の文章術」は2015年初版。「人を操る禁断の文章術」を見ると、ここ十年で書籍のレイアウトは、Webと相互に影響をうけ本当に読みやすくなったと痛感します。

まとめ

この2冊、おそらくターゲットのセグメントが全く異なるので、横並びで比較してはいけないのだとは思います。

しかし「人を操る禁断の文章術」は「これなら読んでもらえるな」という安心感を持って人に勧められる良著ですが、「20歳の自分に受けさせたい文章講義」はお勧めできないし、簡潔にまとめる必要のある「Webライティングやビジネス文章向け」の手本となる書籍でもありません。


20201112

0 件のコメント :

コメントを投稿